仮想通貨(暗号資産)を取引している人は、利益が出た場合、確定申告をする必要があります。
しかし、確定申告の仕組みは複雑で、特に仮想通貨の税制は他の金融商品と異なるため、間違いやすいポイントが多く存在します。
本記事では、仮想通貨の確定申告について、初心者にも分かりやすく、基礎から実際の申告手続きまで詳しく解説します。
1. 仮想通貨の確定申告が必要な人とは?
すべての人が確定申告をしなければならないわけではありません。
一定の条件を超えた場合にのみ、確定申告の義務が発生します。
(1) 給与所得者(サラリーマン)の場合
会社員や公務員などの給与所得者で、仮想通貨の取引を行っている人は、以下の条件を満たすと確定申告が必要になります。
- 仮想通貨の取引で 年間20万円以上 の利益が発生した場合
- 副業をしていて、仮想通貨を含む副業の所得合計が20万円を超えた場合
(2) 給与所得者ではない場合(個人事業主・無職・学生など)
給与所得がない人(フリーランス、無職、年金生活者、学生など)は、所得が 基礎控除額(48万円) を超えると確定申告が必要になります。
2. 仮想通貨で課税対象となる取引とは?
仮想通貨に関するすべての取引が課税対象になるわけではありませんが、以下のような取引を行った場合は所得として計上しなければなりません。
(1) 仮想通貨の売却
仮想通貨を購入し、値上がりしたタイミングで売却した場合、その差額が利益となり、課税対象となります。
例
- 1BTCを300万円で購入
- その後、500万円で売却
- 利益は500万円 – 300万円 = 200万円(課税対象)
(2) 仮想通貨同士の交換
仮想通貨同士の交換も、課税対象となります。例えば、ビットコイン(BTC)をイーサリアム(ETH)に交換した場合でも、BTCの取得価格と交換時のETHの評価額の差額が利益とみなされます。
例
- 1BTCを300万円で購入
- その後、1BTCを400万円相当のETHと交換
- 利益は400万円 – 300万円 = 100万円(課税対象)
(3) 仮想通貨を利用した支払い
仮想通貨を使って商品やサービスを購入した場合、取得価格と使用時の価格の差額が利益となり、課税対象になります。
例
- 1BTCを300万円で購入
- その後、1BTCを500万円相当の商品購入に使用
- 利益は500万円 – 300万円 = 200万円(課税対象)
(4) マイニング報酬
マイニング(採掘)によって得た仮想通貨は、取得時の時価で所得として計上する必要があります。
(5) ステーキング報酬やエアドロップ
ステーキングやエアドロップで受け取った仮想通貨も、受け取った時点での市場価格を所得として計上しなければなりません。
3. 仮想通貨の所得区分と税率
仮想通貨で得た利益は、原則として「雑所得」として扱われます。これは、株式投資やFXとは異なる扱いとなるため注意が必要です。
(1) 雑所得とは?
仮想通貨の利益は、一般的に雑所得に分類され、総合課税の対象となります。つまり、他の所得(給与所得や事業所得など)と合算され、その合計額に応じて税率が変わります。
(2) 税率の仕組み
仮想通貨の雑所得に対する税率は累進課税方式となり、所得が増えるほど税率が高くなります。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円 | 10% | 97,500円 |
330万円〜695万円 | 20% | 427,500円 |
695万円〜900万円 | 23% | 636,000円 |
900万円〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、仮想通貨の利益が500万円だった場合、所得税だけで約100万円以上の税金が発生する可能性があります。
4. 確定申告の具体的な手続き
仮想通貨の確定申告を行うには、以下の手順で進めます。
(1) 取引履歴の取得
利用している仮想通貨取引所(コインチェック、ビットフライヤー、バイナンスなど)から年間取引履歴をダウンロードします。
(2) 取得価格と利益の計算
仮想通貨の取得価格は、「移動平均法」または「総平均法」のいずれかで計算できます。通常は移動平均法が推奨されます。
(3) 確定申告書の作成
確定申告書は以下の方法で作成できます。
- 国税庁の確定申告書等作成コーナー
- 会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生会計など)
(4) 申告・納税
納税は以下の方法で行います。
- 電子申告(e-Tax)
- 税務署への持参・郵送
- 銀行振込やクレジットカード払い
5. 節税対策
(1) 経費計上
仮想通貨の取引に関する費用(取引手数料、会計ソフト費用、税理士報酬など)は経費として計上できます。
(2) ふるさと納税の活用
住民税を節約するために、ふるさと納税を活用するのも有効です。
6. 申告漏れのリスク
仮想通貨の取引はブロックチェーン上に記録され、税務署も追跡可能です。申告漏れが発覚すると、無申告加算税や重加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。
仮想通貨の確定申告は複雑ですが、ルールを理解し、適切に処理することで税務リスクを回避できます。早めに準備を進め、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。